【第四章 湿潤治療確立まで】
興味深いので概略をざっくりと。著者は外科で研修医時代を過ごした。外科の常識は、「術前に消毒、術中は無菌状態を保ち、術後も抗生物質投与、創部は毎日消毒に滅菌ガーゼ。抜糸するまで(つまり術創が塞がるまで)は、風呂に入れない」(傷口の化膿防止のため)。ところが、痔の手術では、どうせ便で汚れるからと、術後の創部消毒をしない。便は大腸菌の巣窟であるにも関わらず。
→消毒と化膿は関係ないのではないか?
次に、著者は形成外科に入る。外科では抜糸まで傷を濡らさないのが常識だったが、形成外科では、術後も消毒薬入りの水で創部を毎日洗浄する。
→外科の常識が崩れる
そして、褥瘡治療の現場に携わったとき、「ドレッシング」という本を知り、その本を参考にして湿潤治療を試しはじめる。それを、通常の怪我人にも施しはじめたところ、意外なほど効果が現れ、現在の湿潤治療へと繋がる。
著者は湿潤治療の啓蒙活動を始めるが、他の医師から反発を受ける。医者はどうやら、臨床的な統計データなどを重視してしまうらしい。湿潤治療は統計とれるほどのデータが揃っておらず、著者は湿潤治療の正当性についての主張に苦しむ。そこで著者は、創傷治癒過程の基礎や、ひいては生物学や微生物学の基礎を勉強しはじめる。また、ネットで湿潤治療を紹介しはじめる。失敗例もきちんと公開した辺りに、医師らしさを感じる。施術においては失敗例こそ、学ぶべきポイントが多いからだ。
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